社Dへの道 ~折り返し地点~

こんにちは。レトリバの飯田(@meshidenn)です。TSUNADE事業部 研究チームのリーダーをしており、マネジメントや論文調査、受託のPOCを行なっています。

2020年4月から、東京工業大学(東工大)の岡崎研究室に社会人博士課程で所属しており、論文が一本出せた段階です。折り返し地点でちょうど良いタイミングと思いますので、社会人博士で何を学べているのか、仕事との兼ね合いはどうなのかなど書いていきたいと思います。

何を学べている?

概ね、博士号のとり方の3章「博士号の本質」に記載されている様なことが学べていると感じています。特に実感している点は、「研究しうるトピックを開拓し、必要なテクニックをマスターし、説得力を持って「発見」を示す」ことです。 例えば、研究のゴールの一つに論文を投稿するということがあります。論文が採択されるためには、以下の様な事項を査読者に対して説得する必要があると感じています。

  • 取り組んでいる課題に価値があること
  • その課題に対して、未知であることに取り組んでいること(新規性)
  • 未知の課題に対して、解決する仮説やアイディアがあること
  • その仮説がうまくいっていることを示す実験をしていること
  • 同様な課題に取り組んでいる研究とどのような差があるのか(関連研究)
  • 取り組んだ課題に対して、わかったことがあり、領域全体の発展に寄与していること

博士に入る前の私は、無意識にPDCAのようなフレームで捉えている部分があり、Xすれば精度上がりそう→実験する→結果を見る→改善できたもの・できなかったものを把握するというアクションをしていました。しかし、論文にする際には、非常に問題がありました。

  • 結果が出ても、仮説が込み入った形になり、わかりづらくなる
  • 他の研究との位置付けがはっきりしない
  • 課題→仮説→解決方法の繋がりが不明確になる
  • 実験結果が、仮説をサポートするものには不十分

さらに、これらよって研究活動としては、他の人に伝えづらくアイディアや助けをもらいづらいという結果になりました。

私が今まで携わってきた活動の場合は、実施事項の価値自体はすでに設定されており、仮説も精度が上がる以上のことは特になくてもあまり問題がない場合が多くありました。また、他の研究との位置付けを明確化する必要性も新規性の必要性もありませんでした。その結果、Planの意味合いとして、実行計画の側面が大きくなっていました。研究でも実行計画は大事なのですが、課題・仮説・位置付けがより重要であるという認識です。また、それによって何を示すか変化するので、実行計画が変わります(え、入学時の研究計画で書いておくことではないかって?)。このあたりは、論文を書いていくうちに、徐々に是正されつつあります(え、修士でできていることではないかって?)。これによって、事前の問題設定の切れ味が増しつつある期待感があります。

一方、テクニカルな面ですが、私の場合は、まず簡単でもいいのでタスクに取り組むことが重要と感じています。 社会人博士は時間があまりないので、実行環境を整え、実行計画を立てる上で、「本質的ではない部分で時間がかかって無理だ」という感覚を消していくことも重要かと思います。また、技術的な勉強だけをする時間はなかなか取れないので、やりながら身に付けることになるかと思います。つまり、取り組むタスクをそこそこ決めたら、とにかくやるモードとちゃんと計画を練るモードを往復していくというのが、私には合っているスタイルの様に感じています。おそらく、この繰り返しを通じて分野内の専門領域を確立していくのだなと思いました。

仕事との兼ね合いは?

以前ブログで紹介しました通り、平日週1日を研究に充てています。また休日も研究をしています。1年目はなかなか大変でしたが、今年は仕事に近い検索をテーマにしていることもあり、特に仕事の面で、相乗効果が見られています。

研究面における、仕事との研究の相乗効果という点では、こちらの記事がおすすめです。この記事は、新しく専門領域を確立していく方、つまり修士の研究の続きをやるわけではない方向けの記事ですが、私も元々は航空宇宙という畑違いの分野にいたため、新しい専門領域の確立という点で、参考になる部分が多い記事でした。特に、未解決問題を業務から抽出した問題意識をもとに研究テーマを設定 という部分は、共感しました。

学生生活

研究については、上記の通りですので、割愛します。授業についてですが、幸い弊社には中抜け制度があり、授業の時間帯だけ業務を抜けて授業を受けることができました。また、授業がリモートになったのも幸いでした。なお、博士課程では、単位として認められる授業が、グループワークのようなものが多かったです。専門的なリテラシーを身に付けたいという方は、修士の方が向いていると思いました。このあたり、修士と博士の違いも博士号のとり方の3章に記載があります。博士か修士か悩まれる方は、一読されてみると良いかもしれません。

まとめ

社会人博士学生の途中経過として、博士課程から得られていること、仕事との違いや兼ね合いについて述べました。博士論文としてまとめるにはまだまだ山がありそうですので、引き続き頑張っていきたいと思います。